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研究内容

TITLE:腎集合尿細管における酸排泄機序の解明と慢性腎臓病(CKD)治療への応用

 本研究の目的は腎集合尿細管間在細胞における詳細な酸(H+)排泄機序を解明することです。
生体内では、食事、細胞代謝により産生される不揮発性酸(硫酸、硝酸、リン酸)により常に酸(H+)が負荷されますが、腎臓のH+排泄機能により血液は弱アルカリ性に維持されています。血液pHの変化に応じたH+の排泄調節には間在細胞が重要な役割を果たします。間在細胞において、H+はアンモニア(NH3)と共にアンモニアイオン(NH4+)として尿中に排泄されます。
CKDの進行抑制にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬は必須の治療薬ですが、その有害作用には代謝性アシドーシスと高カリウム血症があり、進行した慢性腎臓病の患者に合併する代謝性アシドーシスと高カリウム血症を増悪するジレンマがああります。そのため、RAASを介さない酸排泄調節系の発見とその治療への応用が期待されます。


間在細胞発現アンモニアトランスポーター(Rhcg)の調節機序の解明

目的:腎臓における尿中酸排泄がアルドステロンにより調節されることは知られていますが、その詳しい調節機序については明らかではありません。


方法:C57BL/6Jマウスにオスモティックポンプを用いてアルドステロンを持続投与し、尿pH、尿中アンモニウム排泄量、滴定酸排泄量を測定した。その後腎組織細胞膜分画を抽出後、アンモニアトランスポーターであるRhcg蛋白の発現をWestern blottingによって検討しました。




アルドステロンによる尿中酸排泄は、アンモニアトランスポーターであるRhcgの集合尿細管管腔側膜上の発現増加を介した、アンモニウムイオン分泌増加によることが示唆されます。




間在細胞における低pH誘導遺伝子群の網羅的解析

目的:CKDの進行により生じる代謝性アシドーシスは尿中酸排泄能の低下によるものですが、アシドーシスが顕在化する前に酸排泄障害が生じ、腎組織は潜在的に低pH状態になることが示唆されています。低pH環境が尿細管細胞にどのような影響を及ぼすかは、ほとんど検討されていません。そこで低pHが間在細胞に発現する遺伝子群をどのように調節するか検討しました。

方法:ラット間在細胞由来細胞株(IN-IC細胞)をpH7.4またはpH7.0環境下で24時間培養→Next Generation Sequencing (NGS) Technologyを用いたCAGE法によるtranscriptional start siteの同定と遺伝子発現の定量→Geneontology analysis and motif analysis→低pH刺激により変動する遺伝子群の同定、低pH刺激反応性転写因子の同定。





NGS: 次世代シークエンサー技術を用いて、一度に数千万のDNAシークエンシングを行う。Micoroarrayに代わって、未知の遺伝子も含めた網羅的な解析が可能。


低pH刺激により193遺伝子が発現増加し、34遺伝子が発現低下しました。


低pH刺激によるユビキチン‐プロテアソーム系関連遺伝子群の発現増加とユビキチン化の亢進

Gene ontology analysis により、低pHにより変動する多くのmolecular process や molecular function を見出し、特にユビキチン-プロテアソーム系が活性化することが示唆されました。

熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野
熊本大学医学部附属病院 腎臓内科 〒860-8556 熊本県熊本市中央区本荘1丁目1-1  TEL.096-373-5164

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