教室紹介

教授挨拶

新しい腎臓内科学を目指して

 熊本大学医学部腎臓内科学教室は、昭和55年(1980年)に熊本大学第三内科(佐藤辰男教授)腎臓グループとして発足、江藤賢治先生、中山眞人先生らによってその基礎が固められました。平成6年(1994年)に腎臓内科学を専門とする冨田公夫教授が第三代第三内科教授として着任されて以来、腎臓病の診療・教育および研究における内容が一層充実し、現体制のほぼ全てができ上がりました。その後、大学院大学への移行に伴い、平成16年(2004年)から熊本大学大学院医学薬学研究部・腎臓内科学分野に、さらに平成22年(2010年)からは熊本大学大学院生命科学研究部・腎臓内科学分野に名称変更され、現在に至っています。
 平成26年(2014年)4月に、私が第二代腎臓内科学教授として着任しました。これまでの教室で積み上げられてきた伝統を重んじつつ、研究・診療において新たな海へと漕ぎ出すべく、教室員の皆とともに気持ちを引き締めています。今回の船出に際し、同門会の先生方をはじめ、熊本大学や他大学の先生方の温かいご支援に感謝いたします。
 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が提唱されてから早くも10年以上が過ぎ、今やCKDはわが国および世界各国で「国民病」としての地位を確立しました。とくに、CKDが独立した重要な心血管病リスクであることが認識されるに至り、それへの啓蒙活動と対策が方々でなされています。にもかかわらず、CKD患者数は一向に減る気配がありません。CKD発症・進展の基盤にメタボリックシンドローム(MetS)の病態が深く関わることが、その理由のひとつと考えられます。もうひとつは、最近とみに注目される急性腎障害(acute kidney injury:AKI)からの移行です。とくに、がんや移植医療、また救急医療に伴うAKI発症は無視できず、腎臓内科医にとっても重要な介入領域と考えます。一方、基礎医学に目を転じれば、iPS細胞研究に代表される幹細胞研究が隆盛を極めており、腎臓病学の分野でも例外ではなく、わが国から多くの優れた知見が発信されています。
 そのような中、今後の10年間を腎臓内科学のnew decadeと位置づけ、腎臓病の発症・進展の病態解明、新規治療法開発に邁進したいと考えています。スローガンとして、①新たな腎臓内科学の探求、②病態に根差した腎臓内科診療の追求、③幅広な腎臓内科診療の展開、の3つを掲げます。
 まず①では、metabo-nephrology、onco-nephrology、regenerative nephrologyを教室の大きな研究・臨床テーマとして掲げ、MetSとCKD、がんその他とAKI、腎臓再生医療の研究から、病態解明、創薬へと目指していきます。②では、disease-orientedでも、patient-orientedでもない、mechanism-orientedの腎臓病学を全ての出発点にしたい。③では、横幅(診療科・専門分野・大学間)、縦幅(職責・年齢・施設間)、前後幅(「基礎から臨床へ」)、回転幅(常に「遊び」を意識)において、風通しのよい、幅広な診療・研究を展開していきたいと思います。そして、常に広い視点に立って問題点を見極め、調整を図り、背景を含めて全身を診ることができる医師、先を見通せる人材を育てていきたいと思います。
 腎臓内科学の臨床は、一次性(腎炎・ネフローゼ症候群)、二次性(糖尿病・高血圧・膠原病など)の腎臓病から、腎不全・透析医療、はては高血圧・電解質異常の診療全てを含む極めて多彩な領域であり、内科学全般に及ぶと言っても過言ではありません。教室は日本内科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本高血圧学会の認定施設であり、これまで多くの専門医、指導医を輩出してきました。研究においても同様に多岐にわたっており、いわゆる腎臓の分野にとどまらない優れた成果も多く発表されています。このように、研究・教育・診療のあらゆる場面において、全ての教室員がそれぞれ異なる立場で、異なるスタンスに立ちながらも、常に「楽しく、仲良く、activeに」を合言葉に、同じ目線で新しい腎臓内科学とよりよい医療を目指す、そのような教室を実現していきたいと考えています。

熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野 教授
向山 政志



熊本大学大学院生命科学研究部 腎臓内科学分野
熊本大学医学部附属病院 腎臓内科 〒860-8556 熊本県熊本市中央区本荘1丁目1-1  TEL.096-373-5164

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